向かい合うのもやりすごすのも大変なものです、藤野千夜「恋の休日」。

文庫で読んだのですが、角田光代さんの解説がすごく上手く藤野千夜さんの魅力を表しているなと思いました。登場人物たちは、「圧倒的に本質を語らない」んですが、だからこそ本質の近くにあるんではないか、と思います。角田さんが全部言いたいこと言ってくれてるのであまり感想書くこともないのですが。
途方もない状況になっても、親にも友人にも「これがこうなってこうこうなのでこんな気持ちで大変です」とは一言も言わない、というか「大変だ」とわざわざ認識して大変な事態の解決に奔走するなんてことを避けているような主人公たちは、追及する側の人から見たら「不真面目だ」って言われるんだろうけど、ぎりぎり人生やっていく方法探してんのに不真面目もくそもあるかい、てな空気を漂わせて生きていってる。切ながられるのなんてまっぴらと鼻歌歌ってるんでしょうけど、その鼻歌はなかなか胸に沁みるメロディだぜ、というか。
軽い気持ちで読んじゃえるのに後々まで残ってくる時限爆弾のようなこの感じはなんか中毒性があって、もっと藤野さんの作品を読んでみたくなってしまいます。