もっともっと狂ってくれてもいいんすよ「幸せ最高ありがとうマジで!」。

宿屋めぐり」で「気が狂ってる」ってなんだよ、と思ってたら、ここにもいましたね、きちがい扱いされてる人が。でもこの人は自分で人格破綻だの明るい精神障害だの言いまくってるからなあ。きちがい扱いされたい人、ですかね。
これもう千秋楽だったから感想いろいろ書いてもいいんでしょうね。

作中では名前すら明らかにならなかった永作博美さん演じる明里は、本当に何者なのかも全く分からないまま、ただただ己とは何の関係もない新聞販売所の一家を崩壊させることに異様なはりきりを見せるのですが、何か結局明里さんだけが壊れちゃって、他の人たちは結果的に明里さんのおかげで絶望掘り起こされていろいろぶっちゃけてすっきりして?かどうかは分からないけど「生活」に戻っちゃって。不幸を運んできたはずなのに希望の星呼ばわりされた明里は一人取り残されちゃって。な話。でいいのかしら?筋らしい筋がないのでどう解釈していいのやら、ですが、そんな感じ。
本谷有希子さんのお芝居見るのは初めてですが、んー、このお話だったらもうちょい小さいとこでみたいですねえ。演者さんの負のエネルギーみたいの、もっと身近で見てみたい、ていうか浴びてみたい。
お話としては、本で読んだだけですが「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」とか「生きてるだけで、愛。」とかのが好きですね。本谷さんの話はエキ子さんの内面描写が好きなので、今回の明里さんがエキ子さんとして生きてる背景とかが知りたかったのですが、それが無かったので。「不幸なんて理由ないのよ」みたいな台詞言ってたような気がするけど、明里さんがいることにも理由なんてない、ってこと?いやー、でもそれじゃ明里さんかわいそうじゃん。かわいそうがったら怒りそうだけど。明里さん、破綻破綻言ってるけど、もしかしたら実は一番まともかもしれないのにね。バイトは虚言癖でかわいそがりっこで手首切りっこだし、嫁は許す許すっつって何にも許してないし、息子は妹に欲情してるし、妹は兄を挑発しちゃうし、亭主はレイプとかするくせに逆境に弱いし。でも、明里さんもこういうのに匹敵するような「ぶっちゃけられねーよ」を抱えて飛び出して新聞屋で弾けたんだろか、とか思うとやっぱりその秘密も知りたくなってしまいます。自分では「明るい精神破綻」「絶望の種がないのが絶望」みたく言ってましたが、ラストで「何で私が壊れなきゃいけないのよー!」となっちゃって、あ、やっぱ、壊れてることに納得してる訳じゃなかったんだ、と。いや、ほんとに全く理由ないから納得できないだけかもしんないけど、なんにも壊れる理由ない、っていう方がむしろ凄くない?あり得るのそんなこと?すごいさっくり2時間で終わっちゃったのですが、その辺もっと長くごちゃごちゃもやもやしてくれてもOKでした。
それにしても、永作さん、明里さんとして出てきた時は「きれいだけど怖いわ」と思ったのですが、カーテンコールの時に「にこっ」としたの見て、さっきと全然違う!超かわいい!と度肝抜かれました。「何やっても永作さん」タイプの人かと思ってましたが、単にそういう役柄が多いだけなんですね。あと、本谷さんの細さにも度肝抜かれました。永作さんと並んで遜色ないって、すごいよ。
で、終わってからパンフ買って、持ってた鞄に入らないので「ビニール袋ください」と言ったら、「パンフにはビニール袋つけてないんですー」とのこと。思わず「そこにあほほどあるやろがい!」と叫びたくなったけど叫ばない。だって危ない人と思われたくないもの。明里さんだったら叫んでんでしょね。なんかその方がまっとうな気もしなくはないわ、と思いながらずっと片手にパンフ抱えて家まで帰りました。