緻密な計算と繊細な抒情の両立くらもちふさこ「駅から5分」。

そういえば1巻の感想書くの忘れていましたが。
いや、これは2巻になってますます素晴らしいです。さすがくらもちふさこさん。
こういう、ひとつひとつのストーリーが上手くリンクしているオムニバスって、仕掛けの方が大きくなりすぎて結局お話としてはどうなの?ってなりがちなんですが、これは一話ずつのクオリティが非常に高い上に、「ああっ、そんなところに伏線がっ!」となるのがすごい。くらもちさんのつながり系オムニバスといえば「チープスリル」を思い出しますが、それよりはるかに入り組んでいますね。そしてあれは「小学校が一緒の3人」という仕掛けだったのですが、これは「町」が仕掛けになっているので、見たこともない(つもりの)人たちの起こした出来事が巡り巡ってまた別の出来事になっていき、「ああ世界はつながっているなあ」と思わされます。
特に1巻の最後の話と2巻の声優さんの話。仕掛けが素晴らしく生きていて。2巻の最後の話も好き。脇役が脇役じゃなくなる話はなんだかじんときます。声優の外山りおさんのセリフじゃないけど、今この物語の主人公は世界中で私ひとりしかいない、というのをひとりひとり丁寧に描いてくれててすごく良い。しかも語り口も話によって違っていて、どれだけ見せ方の角度をしっているんだと感心せざるをえません。
ただ、「チープスリル」でいうところの「ウメちゃん」的存在になりそうな陽大の力がまだよく分からないなあ。「不思議な力」じゃなくて単なるプラシーボのほうがいいなあ、と個人的には思うのだけど、物質にプラシーボ通じないし、やっぱり力なのかなあ。なんだかそこだけ唐突すぎる気がしてしっくりこないのですが、くらもち先生のことだからそれもうまくまとめるのでしょうね。まとまるまでにどこまでつながりが広がっていくのかとともに楽しみです。