踏み外す場所も救いの場所も分かればいいのに「バベル」。

映画の中で「悪い人間じゃないわ、ただ愚かなことをしてしまっただけよ」というセリフがありますが、これがすべてを表していると思います。
本当に誰も悪い人はいないのですが、なんでこんなにみんな悲しいんでしょう。それでいて救いがある約束もどこにもない。それでも今ここで生きなくてはいけない。何か伝えなくてはいけない。伝えるために出来ることにそれぞれが必死でたどりつこうともがく。そのたどり着いたところは救いではなく絶望かもしれないけど。それでも伝えるのです。それに私は打ちのめされます。
それぞれのパートが一つに、ていう話だと聞いてたけど、そこはどうだろう、と思うところも正直ありました。それぞれのパートの物語に引き込まれているのに、急に場面切り替わられると「いや、今はもっとこの場面見たいところやーん」と。しかし映像がいちいち素晴らしいのと、切り替わってしばらくしたら案の定そこで夢中になれたのでまあいいです。
あと、菊地凛子は凄い。凄まじい。「化物みたいな目で見られた、もっとすごい化け物見せてやる」って感じの台詞がありましたが、菊地凛子のあの演技が化物だと思います。なぜあんな「生き物」の叫びが出来るのか。そして菊地凛子演じるチエコのメモは、私たちは最後までほとんど見ることができず、私たちとチエコのコミュニケーションは断絶されます。でも最後の菊地凛子役所広司のシーンが、ほとんど言葉で語られてないこの二人を教えてくれて、いいことばかりではない世界で一筋の救いになってくれます。
ただ、東京で最先端的な(とされている)店の名前が「J-POP」というのはいかがなものかと思います。せめてJを抜いてくれてたらまだましなのに…こういうのってだれも注意しないんでしょうか。もったいないもったいない。